稲作の安全作期
青森県弘前
稲作の安全作期:青森県弘前
1.平年の平均気温と降水量推移(図1参照)
平均気温:5月上旬頃から急激に上がり、入梅後上昇がやや抑えられ、7月上旬に入ると再度上昇する。8月7日から13日頃最高の23.8度に達した後、急激に下がるのが特徴です。
降水量:梅雨期間中は3ミリ前後の降雨があり、盛夏にやや少なく、8月下旬から9月上旬の秋雨期に5〜6ミリ程度の降雨がある。梅雨期の降水量が少ないのが特徴です。

図1 青森県弘前の平均気温と降水量推移(5月〜10月)
2.安全作期と好適な発育ステージ経過
安全作期策定に関する気温指標を表1に整理しました。これらのうち、障害型冷害と遅延型冷害の危険度を少なくする上で重要な指標は穂ばらみ期の安全早限日と成熟期の晩限日です。穂ばらみ期の安全早限日は梅雨明け後の8月1日になります。また成熟期の晩限日は10月3日です。
穂ばらみ期の安全早限日を採用すると、登熟に必要な温量が確保できないため、この示数を破棄せざる得ません。すなわち、障害型の冷害の危険性を常にもつことになります。次に、成熟期の晩限日と梅雨明けに減数分裂期をもってくるようにして好適なステージ経過を設定すると、表2のようになります。幼穂形成期は7月11〜17日、出穂期は8月6〜11日、成熟期は9月21日〜10月2日。障害型冷害の危険期は7月19日〜8月6日に相当します。
幼穂形成期から出穂期までの積算日照時間は図2の通りで、幼穂形成期を7月11〜17日にもってくると、変動は比較的小さいです。また登熟条件を示す気候登熟量示数は図3の通りです。幼穂形成期を7月11〜17日にもってくると、同示数は1000前後となり最適な範囲に入ります。登熟条件が極めて良好なことを示します。
表1 作期策定に関する気温指標
温度指標 | 作 期 | 弘前 |
平均気温10度初日 | 夏作物の生育可能時期 | 4月26日 |
平均気温11.5度初日 | 湛水直播の安全早限日 | 5月3日 |
平均気温12度初日 | 稚苗移植の安全早限日 | 5月5日 |
平均気温13度初日 | 中苗・成苗移植の安全早限日 | 5月14日 |
平均気温13.5度初日 | 乾田直播の安全早限日 | 5月19日 |
最低気温19度初日 | 穂ばらみ期の安全早限日 | (8月1日) |
最低気温10度終日 | 成熟期の晩限日 | 10月3日 |
平均気温10度終日 | 夏作物の生育可能晩限日 | 10月24日 |
表2 好適な発育ステージ経過(弘前)
発育ステージ | 好適期間 |
幼穂形成期 | 7月11〜17日 |
花粉母細胞分化期 | 7月19〜24日 |
減数分裂期 | 7月26〜31日 |
花粉内容充実期 | 8月1〜6日 |
出穂期 | 8月6〜11日 |
乳熟始め(傾穂)期 | 8月17〜22日 |
糊熟期 | 8月27日〜9月1日 |
黄熟期 | 9月7〜14日 |
成熟期 | 9月21日〜10月2日 |


3.好適な移植期間
品種の早晩性を最終葉数、苗質を移植時の葉齢として、移植の安全早限日を考慮して好適な幼穂形成期の範囲に入るように移植日を予測すると表3のようになります。
最終葉数が13のクラスのものについては、稚苗が5月20〜31日、中苗が5月28日〜6月6日となり、両苗質を組み合わせると約15日間の移植期間を確保することができます。最終葉数が14のクラスのものについては、稚苗が5月5〜9日、中苗が6月28日〜7月1日、成苗が5月14〜27日となり、3つの苗質を組み合わせると約20日間の移植期間を確保することができます。
表3 苗質別・早晩性別の好適な移植期間(弘前)
苗 質 | 稚 苗 | 中 苗 | 成 苗 |
最終葉数13 | 5月20〜31日 | 5月28日〜6月6日 | − |
最終葉数14 | 5月5〜9日 | 5月14〜20日 | 5月14〜27日 |
注)移植時葉齢は稚苗3.5、中苗4.5、成苗5.5(不完全葉含む)。活着に要する日数7日と仮定。
最終葉数13の穂首分化期は稚苗で6月28日〜7月5日、中苗で6月28日〜7月6日。
最終葉数14の穂首分化期は稚苗で6月29日〜7月1日、中苗で6月28日〜7月1日、成苗で6月23〜30日。
4.いもち病の監視ポイント
いもち病に関する指標を表4に示します。葉いもちの発生は梅雨入り以降注意し、葉いもち蔓延可能日までに感染好適条件が7〜10日周期で数回あれば要注意です。実際の葉いもち発生状況に注意し、発生をみたら治癒剤の散布が必要となります。葉いもち蔓延可能日以降も感染好適条件が多発するようですと穂いもちの警戒を強める必要があります。梅雨明け(平年なら減数分裂期直前)に葉いもちの発生状況を確認して、穂いもち防除の対策を検討する必要があります。葉いもちの発生がその後も続くようなときは、出穂期に穂いもちの治癒剤の散布を、さらには追加防除を傾穂期までには実施することが重要となります。
特徴は、@梅雨期間中の降雨が少ないこと、A葉いもち蔓延可能日頃が降雨のピークと一致すること、B盛夏には降水量が少ないこと、C穂いもち防除終期頃に比較的降水量が多いことです。
表4 いもち病に関する指標
指 標 | いもち病監視と対策 | 弘前 |
平年梅雨入り | BLASTAM情報による監視開始日 | 6月14日 |
平均気温20度初日 | 葉いもち病蔓延可能日 | 7月12日 |
平年梅雨明け | 葉いもち発生状況チェック | 7月26日 |
平年減数分裂期 | 穂いもち警戒・防除 | 7月26〜31日 |
平年出穂期 | 穂いもち警戒・防除 | 8月6〜11日 |
平年乳熟始め(傾穂)期 | 穂いもち防除終期 | 8月17〜22日 |
注)平年減数分裂期、出穂期、乳熟期は表2と同じ。
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