閑話休題
日本農業新聞10月18日論説から
「やはり暖冬否定の寒候期予報」
冬らしい冬になりとの気象庁の寒候期予報(11月から3月)が発表された。これまで9年間も暖冬傾向にあったので、地球規模の気候変動との関連が関心を呼んできたが、これを否定した形である。ただ気温の変化が激しいことは変わりがないとの見方である。
北日本以外は平年並み
気象庁は先に発表した気象白書で、昨年12月から2月までの冬の天候を総括して、平年並みの冬だったとしていた。従って今回の寒候期予報は、この延長線上の動きと見ることができ、9年間続いた暖冬は一段落したことを再確認した形である。
それによると最近の冬の特徴は、北日本を除いて気温の高い傾向が解消する方向に向かっている。雪の少ない年が続いた日本海側では、東北から西で雪の降る量が増える傾向にある。近畿の昨年は平年並みを上回った。ただし北海道の雪は、気温の変化に関係なく平年並みの状態が続いている。
暖冬が続いていた間の特徴は、北極圏に寒気がたまり、日本など中緯度の地帯まで南下できなかったことである。成層圏を西から東に向かって吹いている偏西風が、緯度線に沿って強く流れているためだった。北半球規模での偏西風のパターンがこの数年は変わってきた。日本の東海上に大陸からの寒気が入りやすくなっている。日本列島の気候に影響の大きい、熱帯の大気や海水温との関係も、暖冬を示唆するものではない。日本の暖冬に関係が深い熱帯大平洋の海水温は、春から夏にかけて平年より西で高く東では低かった。この現象は秋になっても続いている。
それを助けているのが、海水面をなでる東風。暖冬が始まった1990年代当初から弱い状態が続いていた貿易風は、昨年の秋から強まっている。しかも日付変更線付近では、対流活動が平年より活発でない。またフィリッピン近くの海面水温が高い翌年の冬は、北日本を除いて平年並みが多い。
最近の北半球規模の大気の流れなどからすると、似通った1970年、81年、95年があげられている。結局、北海道、東北などが暖冬傾向なのを除いては平年の冬並みで、気温の変動が大きいのが特徴だったことをあげている。
地域に合った情報必要
気象情報を説明されても一般にはなかなか理解するのは難しい。しかし社会生活が多様化して、経済活動が盛んになるにつれて、気象の動きには敏感になっている。農村もその例外ではない。むら興しの有力な部門とされているスキーや、その周辺の民宿など冬の天候に左右されるし、釣りブームにのった水辺沿線の活性化にも影響が少なくない。
野菜や花など園芸地帯では、経営が揺さぶられかねない側面をもっている。産地毎に分散出荷するしきたりで進んできており、出荷時期のずれは、暴落につながるからだ。近年は輸入物の野菜・花との関係もあり、値下がりする度合いが高まってきたから、なおさらだろう。
花作りでは、物日に合わせて生育管理をしているのに、予想外の高温続きで値崩れをおこすことも珍しくない。地域に合った情報源の開発も必要になってきた。
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