水稲冷害研究チーム

早期警戒情報



 
 4月,5月の気象経過から,どうしても平成5年の大冷害が思い出されます。同年の研究日誌によると,厨川の大規模圃場で5月12日に移植した苗は5月17日には活着したような兆候が認められた。今年は苗の生育の遅れから5月17日に移植されたが,本日25日活着した兆候はまだ認められない。また,低温による葉先の枯れや白く変色している状況である。
 過去,このような気象経過に類似の年としては昭和46年がある。山形県農業試験場の吉田氏らの「昭和46年の異常気象における水稲作況に関する一考察」(東北の農業気象,第18号,昭和48年)によると,昭和46年の作況指数は90となり,昭和20年以来の不作となった。減収の主因は,苗代期(4月中旬〜5月10日)の低温・寡照・多雨・降霜と登熟期(8月16日以降)の低温・寡照であり,ともに類例の少ない異常気象であったという。同年の類似年としては,昭和9・大正2・昭和38年で,いずれも収量の平年比(前7カ年の最高・最低の収量年を除き5カ年の平均を平年とする)は,55%,87%,72%と甚大な凶作年となっている。昭和46年の稲作の特徴は次の通りであった。
・苗代の凍霜害:水面から露出した部分の凍害と黄化現象,二次的に立ち枯れ病が発生。
・田植期の遅延:山形県平均で7日遅れ。
・短稈少けつ型で,出穂遅延は比較的少なかった:5月末から6月上旬の高温多照で肥切れが早く起こり,これに7月の低温が重なり,有効分げつ歩合の低下による穂数の減少と短稈化した。出穂期は7月末から8月上旬の異常高温で促進され,出穂が早まった。
・稲体質の低下:低温と高温の繰り返して,苗質不良とともに稲体質の低下を招き,いもち病の誘因となった。
・登熟不良・品質低下:8月16日以降の低温・寡照は記録的なもので,登熟不良を招き,減収を決定的なものにした。
・病害虫の発生:葉いもち・穂いもちが大発生した。特異的な害虫では,イネドロオイムシ,セジロウンカの大発生をみた。

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