水稲冷害研究チーム

2003年早期警戒情報


2003年早期警戒情報(10月18日)
No.26
- 早期警戒態勢解除のお知らせ -

 生育遅延に伴う被害が地域的に予想されますが、10月16日の青森県モニター圃場の坪刈りと現地調査をもって早期警戒態勢を本日で解除いたします。収穫の遅れている地域では、適期刈り取りを励行頂き、被害を最小限に止める努力をお願いいたします。
 さて、本年の東北地方の水稲作柄は9月15日現在で作況指数86ですが、9、10月の気象経過を考慮すると、作柄はさらに悪化することも予想されます。仙台管区気象台が各月毎にまとめた天候の特徴を示すキーワードは次のようになります。
 5月:記録的少雨、東北日本海側は高温・多照、同太平洋側は中旬に低温・寡照
 6月:上・中旬の少雨と下旬の多雨、下旬の太平洋側北部の低温
 7月:記録的な低温・寡照、上旬と下旬の大雨
 8月:記録的な寡照、中旬を中心とした低温、台風第10号が上陸し、日本列島を縦断
 9月:台風第14号による強風・高波、中旬の高温、下旬の低温
 こうした気象経過のなかで、早期警戒のポイントとなったのは6月下旬頃からオホーツク海上に典型的なブロッキング高気圧の発達が予想されたことです。このことは、インターネットとホームページの普及に伴って北半球500hPaの予測情報が入手できるようになって、初めてのことでした。したがって、6月28日の早期警戒情報第10号でその点を指摘しました。幼穂形成期に入ってもブロッキング現象は続き、オホーツク海高気圧が長期に居座り、7月は記録的な低温・寡照となりました。
 そのため、最高度の警戒態勢に入り、前歴・危険期深水管理といもち病防除の徹底を呼びかけてきました。情報としては公開しませんでしたが、71アメダス監視地点、東北基幹12品種の生育診断圃場ならびに早期警戒モニター圃場について、生育予測モデルによる冷却量評価などを行いつつ、各地から幼穂のサンプルを採種して、葯や花粉の発育状況を調べながら被害程度を推定することに日々追われました。
 そして、8月以降も不順な天候が続き、期待した残暑もなく、あまりに早い秋冷を迎えてしまいました。
 本年の気象経過が作柄に及ぼした影響に関しては、各地から収集した試料の調査データに基づいて、@前歴期間と危険期間の低温や寡照の影響、A基幹品種の危険期冷却量と不稔歩合との関係、B前歴・危険期深水管理による不稔歩合や収量の軽減効果、Cいもち病の異常発生の要因解析などについて数量的に評価し、被害診断技術を高度化したいと考えています。
 本システムの運営を支えて頂いた東北地域水稲安定生産推進連絡協議会の関係機関(仙台管区気象台、東北農政局、管内6県、東北農業研究センター)、東北大学・岩手大学の研究者やアメダス気象情報の提供とシステムの維持管理をして頂いた民間の方々に厚く御礼申し上げます。また、チームと生産現場との接点にある早期警戒モニターの方々、皆さんの努力の成果が私たちの多年の頑張りがついに報いられた証左です。また、一般の方々からは難問を頂き、返事に困ったこともあります。それぞれの方々に感謝申し上げます。
 最後になりますが、チーム長不在のなか、このような冷害気象下において、提供情報の縮減や更新の遅れなどでご不便をおかけしましたこと、また当チームへの問い合わせ、質問等に十分な対応ができなかったを深くお詫び申し上げます。
 そして、最後の最後にお願いがあります。私たちの活動が冷害回避にどのように役立っているのかを評価する上で本年は絶好の機会であると考えます。そのために、近々アンケートページを作成します。多くの閲覧者の皆さんにお答え頂き、今後の活動の糧にしたいと考えています。この点をお願いして、早期警戒態勢解除のご挨拶といたします。
 
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