図説:東北の稲作と冷害
東北農業と稲作
東北の農業と稲作の実態を収穫面積、収量と生産量の面から概説する。
東北農業と稲作
1)地形、気候
東北地方は東西約210km、南北約510kmに及び、中央部に奥羽山系と那須火山帯、東側に北上・阿武隈山系、西側に出羽山系と鳥海火山帯が南北に走る。したがって、日本海側と太平洋側とは脊梁山脈に分断されているため、土壌と気候が大きく異なる。土壌は日本海側では凝灰岩を母材とする粘質肥沃な土壌が広く分布する。また太平洋側北部は火山灰質土壌、南部は花崗岩を母材とする土壌などが分布する。気候は世界的にみて主要穀類の多収地帯である冷温帯に属し、水稲の収量は全国の最高水準にある。しかし、夏の偏東風「やませ」が太平洋側に冷害をもたらし、冬の偏西風は日本海側に多量の雪を降らす。このような気象条件が農業生産に大きな影響を及ぼす。
2) 耕地と農家人口
東北地域の総面積は669.4万ヘクタールで全国の17.7%を占める。また、耕地面積は95.8万ヘクタールで、総面積に占める割合は14.3%、全国平均の14.0%とほぼ等しい。平成6年度の総世帯数は307万世帯、総人口は984万人で、全国に占める割合はそれぞれ7.0%、7.9%である。農家数と農家人口はそれぞれ58万戸(農家率18.8%)、240万人(農家人口率24.4%)であり、いずれも全国平均の2倍以上となっている。
3) 農業の特徴
東北農業は豊かな土地資源と農業労働力に支えられ稲作を中心とした多様な複合農業が展開されている。平成5年現在の耕地面積は95.8万ヘクタール、そのうち水田69%、普通畑15.5%、樹園地9.4%、牧草地6%である。同年の作物別農業粗生産額は1.5兆円、そのうち米37%、畜産27%、野菜18%、果実17%、工芸作物2.8%となっている。

4) 稲作
東北の稲作を概観してみる。図は国土数値情報を用いて主要な水田地帯を抽出したものである。明るい緑の部分が水田地帯、白線は市町村界を示す。また、表は平成8年の県別水稲の収穫面積、収量と生産量を示す。
青森県は、津軽地域と太平洋側の十和田・八戸などが主要な水田地帯で、総収穫面積6万5千ヘクタール、収量は589kg、収穫量は約38万トン。特に津軽地域は収量が600kgを超える東北の多収地帯の一つである。一方、太平洋側はしばしば冷害に見舞われる。基幹品種は「むつほまれ」「つがるおとめ」「むつかおり」。
岩手県は、北上川流域が主要な水田地帯で、総収穫面積約7万ヘクタール、収量は519kg、収穫量は約37万トン。岩手県の沿岸部と北上山地の内陸部はしばしば冷害に見舞われる。基幹品種は「ひとめぼれ」「あきたこまち」「ササニシキ」。
宮城県は、北部に主要な水田地帯が集中的に分布する。総収穫面積9万4千ヘクタール、収量は521kg、収穫量は約49万トン。東北第2の生産量を誇る。基幹品種は「ひとめぼれ」「ササニシキ」。
秋田県は、東北第1の稲作県で、山岳地帯を除けば水田が一面に広がる。特に八郎潟周辺や横手盆地は県内でも有数の米産地となっている。総収穫面積10万5千ヘクタール、収量は581kg、収穫量は約61万トン。横手盆地は冷害の危険度が少なく、収量が600kgを超える多収・安定地帯である。基幹品種は「あきたこまち」。
山形県は、庄内地域と内陸部が主要な水田地帯である。総収穫面積約8万ヘクタール、収量は596kg、収穫量は約48万トン。収量は東北一、庄内や内陸低地は収量600kgを超える安定・多収地帯である。基幹品種は「はえぬき」「どまんなか」「ササニシキ」。
福島県は、中通り、会津、浜通りに主要な水田地帯が広がる。総収穫面積8万8千ヘクタール、収量は544kg、収穫量は約48万トン。会津は収量が600kgを超える安定・多収地帯である。浜通りと阿武隈山系の内陸部はしばしば冷害に見舞われる。基幹品種は「コシヒカリ」「ひとめぼれ」「初星」。
東北全体でみると、総収穫面積50万3千ヘクタール、収量は558kg、収穫量は約280万トンとなり、全国の生産量の約28%を占める米の生産拠点といえる。
東北地域の水稲生産(平成8年度)
県名 | 収穫面積 (ha) | 収量 (kg/10a) | 生産量 (ton) |
青森 | 64,700 | 589 | 381,100 |
岩手 | 70,500 | 519 | 365,900 |
宮城 | 94,200 | 521 | 490,800 |
秋田 | 105,500 | 581 | 613,000 |
山形 | 80,500 | 596 | 479,800 |
福島 | 87,500 | 544 | 476,000 |
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東北全体 | 502,900 | 558 | 2,807,000 |