冷害に関係する主な気象現象とその特徴
冷害に関係する主な気象現象とその特徴
様々な気象現象は時間的・空間的な特徴をもつ。それらの特徴と東北地域の地理的規模を考えると、冷害を監視する上で重要な気象現象は、ブロッキング高気圧と低気圧といえる。気象庁の資料を参考にして、それらの特徴を他の現象と比較することで理解してみたい。
気象現象はミクロな乱流からブロッキング高気圧などのマクロな現象まで広汎な空間的スケールにわたっている。天気予報に関係する気象擾乱(じょうらん:乱し騒がすこと)には、水平規模およそ10kmで2〜3時間持続する積乱雲(雷雲)、中規模現象といわれる大雨をもたらす積乱雲の集団、台風、中緯度の高気圧と低気圧、ブロッキング高気圧などがある(図1)。
これら現象は独立して存在するのではなく、相互に影響しあって実際の気象現象として現れる。
1)ブロッキング高気圧
中・高緯度の上層のジェット気流が南北に大きく蛇行する場合には、地上では大規模な高気圧が停滞する。この高気圧をブロッキング高気圧といい、このような現象をブロッキングという。これが起こると、ひとつの気象状態が長期間継続して異常気象をもたらすことが多い。そのため、ブロッキングは週間予報や長期予報の重要な予測対象となっている。ブロッキング高気圧の発生には、チベット高原などの大きな山岳、大陸や海洋上の加熱が強く影響している。
2)温帯低気圧
温帯低気圧は中緯度で発生し、偏西風にのって西から東に移動する。その水平規模は3〜5千km程度であり、発生から消滅までの寿命は数日間である。温帯低気圧は地表面における寒気と暖気の境目である前線と、前線に沿う悪天候を伴っており、日本のような中緯度地域での天気予報の重要な対象である。温帯低気圧を発達させ維持するエネルギーの源は、太陽から受け取るエネルギーの差によって生じる低緯度と高緯度との気温差である。
3)台風
熱帯低気圧は低緯度で発生し、その水平規模は数百〜千km程度、寿命は1週間程度である。台風とは、北西太平洋に現れた熱帯低気圧のうち、最大風速がおよそ毎秒17m以上のものと定義される。熱帯海洋上では、太陽エネルギーが海面を温め大量の水蒸気を発生させ、積乱雲が発生しやすい状態になっている。この積乱雲がまとまりをもった大規模な集団として組織化されることにより、熱帯低気圧が発生する。このため、熱帯低気圧は海面水温が26〜27度以上で、かつ下層の大規模な気流が集まる地域でよく発生する。西太平洋には海面水温の高い海域が広がっており、熱帯低気圧の発生頻度が高い。
4)中規模現象
水平スケールが20km〜2千km程度の現象を中規模現象と呼んでいる。例えば梅雨前線上の低気圧や積乱雲、台風などがこれにあたる。
梅雨前線と秋の長雨をもたらす秋雨前線は温帯低気圧に伴う前線とは性質が異なる。これらの前線は南の湿った気団と北の乾いた気団の境目に形成され、気温差はそれほど大きくない。前線の移動も明瞭ではなく停滞することが多い。この前線上に数百km程度の広がりをもつ積乱雲の集団が発生し顕著な降水帯を形成するが、低気圧としては発達しないことがある。
(参考文献:気象庁編、平成8年版今日の気象業務から)
以上のようなことから、冷害を引き起こす低気圧やブロッキング高気圧の動向を監視するためには、地球規模の気象や海洋の諸現象の動きを追跡する必要があるといえます。
reigai@tnaes.affrc.go.jp