図説:東北の稲作と冷害

品種解説:「アキチカラ」


本品種の障害型耐冷性は「ホウネンワセ」より弱く“やや弱”である。名前の意味は、“秋に力強く実る。強稈で力強い”を表現する。

品種解説:「アキチカラ」

1.来歴の概要
 短稈、長穂の「北陸101号」を母とし、多収の「アキヒカリ」を父として、1976年に北陸農業試験場で交配された。1983年に「北陸125号」の系統名が付けられ、1986年に水稲農林279号として登録された。

2.形態的特性
・ 稈 長:「ホウネンワセ」より約10cm程度短い。
・ 穂 長:「ホウネンワセ」より2cm程度長い。
・ 穂 数:「トドロキワセ」よりかなり少なく、「アキヒカリ」よりやや多い(下図参照)。偏穂重型のうるち種である。
・ 粒 大:「ホウネンワセ」よりやや大で、「トドロキワセ」とほぼ同程度。
・ 千粒重:「ホウネンワセ」「トドロキワセ」よりやや重い。

「アキチカラ」の特徴

3.生態的特性
・ 出穂期:「ホウネンワセ」「アキヒカリ」とほぼ同じ。
・ 成熟期:「アキヒカリ」より遅れ、「ホウネンワセ」に比べると4日遅く、「トドロキワセ」と同じ。育成地では“早生の晩”である。
・ 収量性:「トドロキワセ」に比べて10%前後高く、「アキヒカリ」よりも多収である(上図参照)。
・ 耐倒伏性:短稈で強稈性の稈質であるため「新潟早生」とほぼ同程度。
・ 葉いもち抵抗性:「トドロキワセ」より弱いが、「ホウネンワセ」と同等ないしはやや強い。
・ 穂いもち抵抗性:「ホウネンワセ」ほぼ同程度。
・ 耐冷性:「ホウネンワセ」より弱い。
・ 穂発芽性:“やや易”

特 性アキチカラトドロキワセホウネンワセ
耐冷性
耐倒伏性極強
葉いもち抵抗性強〜やや強やや強
穂いもち抵抗性
穂発芽性やや易やや難

4.品質・食味特性
・ 玄米の外観品質は「トドロキワセ」とほぼ同等。
・ 食味は「ホウネンワセ」より明らかに劣り、“中の下”である。

5.適地等
・ 東北南部から北陸地域にわたる平坦肥沃地帯に適する。

6.栽培上の注意
・ 多肥栽培で多収を上げうる。ただし極端な多肥は避ける。
・ 耐冷性は特に強くないので冷害地帯は避ける。
・ いもち病抵抗性は「ホウネンワセ」程度であり、特に強くないので適期防除に努める。
・ 枯れ上がりおよび退色が遅めであるので、刈り遅れないように注意する。


<参考資料>
 農林水産省農林水産技術会議事務局(昭和61年6月):昭和61年農林水産省育成農作物新品種(夏作物・園芸作物)。

 
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