図説:東北の稲作と冷害

品種解説:「アネコモチ」


本品種の障害型耐冷性は「わせとらもち」より強く、「タツミモチ」並みの“強”である。名前の意味は、“美しく、美味しい餅ができる品種であることを、東北地方の方言「あねこ」で”表現する。

品種解説:「アネコモチ」

1.来歴の概要
 「ふ系糯133号」を母とし、「ふ系糯119号」を父として、1981年に青森県農業試験場藤坂支場で交配された。1989年に「ふ系糯155号」の系統名が付けられ、1991年に水稲農林糯312号として登録された。

2.形態的特性
・ 稈 長:「わせとらもち」より短い。
・ 穂 長:「わせとらもち」並みかやや長い。
・ 穂 数:「わせとらもち」より少ない、短稈穂重型のもち種である。
・ 粒 大:「わせとらもち」よりやや大きい。
・ 千粒重:「わせとらもち」よりやや重い(下図参照)。

「アネコモチ」の特徴

3.生態的特性
・ 出穂期:「わせとらもち」より2〜3日早い。
・ 成熟期:「わせとらもち」より4日程度早く、育成地では「タツミモチ」並みの“早生の早”である。
・ 収量性:「わせとらもち」「タツミモチ」より高い(上図参照)。
・ 耐倒伏性:「タツミモチ」より強く、「わせとらもち」よりやや強い。
・ 葉いもち抵抗性:「わせとらもち」より強い。
・ 穂いもち抵抗性:「わせとらもち」並みである。
・ 耐冷性:「わせとらもち」より強く、「タツミモチ」並みの“強”である。
・ 穂発芽性:「わせとらもち」より発芽しにくい。

特 性アネコモチわせとらもちタツミモチ
耐冷性やや弱
耐倒伏性やや強やや強
葉いもち抵抗性やや強やや弱
穂いもち抵抗性
穂発芽性やや難

4.品質・食味特性
・ 玄米の外観品質は「わせとらもち」「タツミモチ」より良質である。
・ 餅の食味は「わせとらもち」よりやや良く、「サカキモチ」並みである。
・ 餅質は、一般的にお供え餅、かきもち、あられなどの米菓加工用に適する。
・ タンパク質含量は「わせとらもち」より低く、「タツミモチ」並みである。

5.適地等
・ 寒冷地北部平坦地、その他寒冷地の平坦地から山間地、および関東以西の山間冷涼地帯に適する。

6.栽培上の注意
・ 強稈であるが、品質、食味を低下させないため多肥栽培は避ける。
・ 穂いもち抵抗性が“中”なので、基準防除を徹底する。
・ 登熟が早いので、遅刈りによる品質低下に注意する。
・ 白葉枯病には弱いので、常発地では栽培を避ける。


<参考資料>
 農林水産省農林水産技術会議事務局(平成3年6月):平成3年農林水産省育成農作物新品種(夏作物・園芸作物)。

 
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