図説:東北の稲作と冷害
品種解説:「どまんなか」
本品種の障害型耐冷性は「ササニシキ」より強い“中”である。名前の意味は、“山形県が米どころの中心を担っていくとともに、おいしさのどまんなかを突き抜ける味わいの米であること”を表現する。
品種解説:「どまんなか」
1.来歴の概要
「中部42号」(のちの「イブキワセ」)を母とし、「庄内29号」を父として、1981年に山形県農業試験場庄内支場で人工交配された。1987年に「山形35号」の系統名が付けられ、1992年に「どまんなか」として登録された。
2.形態的特性
・ 稈 長:「キヨニシキ」よりやや短い。
・ 穂 長:「キヨニシキ」より長い。
・ 穂 数:「キヨニシキ」より多い、“中稈中間型”のうるち種である(下図参照)。
・ 粒 大:「キヨニシキ」並みである。
・ 千粒重:「キヨニシキ」並みで、「ササニシキ」より1.0-1.5g程度重い(下図参照)。
3.生態的特性
・ 出穂期:「ササニシキ」より2日早い。育成地では“中生”である。
・ 収量性:「キヨニシキ」「ササニシキ」並みである。
・ 耐倒伏性:“やや強”
・ 葉いもち抵抗性:「ササニシキ」並みで“やや弱”である。
・ 穂いもち抵抗性:「ササニシキ」並みで“やや弱”である。
・ 耐冷性:“中”
・ 穂発芽性:「キヨニシキ」よりやや少ない“やや易”である。
特 性 | はえぬき | ササニシキ | キヨニシキ |
耐冷性 | 中 | やや弱 | やや弱 |
耐倒伏性 | やや強 | 弱 | − |
葉いもち抵抗性 | やや弱 | 弱 | − |
穂いもち抵抗性 | やや弱 | 弱 | − |
穂発芽性 | やや易 | やや易 | やや易 |
4.品質・食味特性
・腹白、心白の発生は少ない。
・ 玄米の外観品質は「キヨニシキ」並みの“上の中”である。
・ 食味は「ササニシキ」並みで、 “上の上”である。
5.適地等
・ 県内全域の平坦・中山間に適する。
・ 中山間地帯の主力品種であり、また、村山(北部を除く)、置賜(小国を除く)、庄内地域各平坦部の「はえぬき」との組み合わせ品種として位置づけられる。
6.基本指標
・ 整粒歩合80%を目標とし、精米の粗タンパク質含有率が低い良食味米が安定して確保できる平方メートル当たり籾数は3.3万粒程度で、このとき収量は600kg/10a(粒厚1.9mm以上玄米)程度である。
・ 3.4万粒を超えると整粒歩合が低下し、食味を低下させる粗タンパク質含有率が高まる。また、精玄米粒数歩合(総籾数に対する粒厚1.9mm以上玄米の割合)、千粒重が低下するため、収量はほぼ横ばいとなる。
・ 1穂籾数は、内陸が69粒、庄内で62粒程度であり、目標とする平方メートル当たり穂数は、内陸で480本、庄内で520本程度である。
<参考資料>
・ 平成11年3月発行、山形県「稲作指針」など。
reigai@ml.affrc.go.jp