図説:東北の稲作と冷害
品種解説:「はぎのかおり」
本品種の障害型耐冷性は「ササニシキ」「みやかおり」よりやや強く“中”である。名前の意味は、“米の美しさと上品な香りを代表的な秋の花である萩に例えたこと”を表現する。
品種解説:「はぎのかおり」
1.来歴の概要
香り米品種の「古2986」(後の「みやかおり」)を母とし、中生、強稈、多収の「東北125号」を父として、1981年に宮城県古川農業試験場で交配された。1988年に「東北144号」の系統名が付けられ、1991年に水稲農林314号として登録された。
2.形態的特性
・ 稈 長:「みやかおり」よりやや長い。
・ 穂 長:「みやかおり」よりやや長い。
・ 穂 数:「みやかおり」と同程度で、草型は中間型のうるち種である。
・ 粒 大:「みやかおり」よりやや小さい。
・ 千粒重:「みやかおり」よりやや小さい(下図参照)。
3.生態的特性
・ 出穂期・成熟期:「みやかおり」より遅く、「ササニシキ」並みである。育成地では“中生の晩”である。
・ 収量性:「ササニシキ」とほぼ同程度で、「みやかおり」に明らかに優る(上図参照)。
・ 耐倒伏性:「みやかおり」並みである。
・ 葉いもち抵抗性:「みやかおり」よりやや強く、「キヨニシキ」と同程度である。
・ 穂いもち抵抗性:「みやかおり」と同程度で、「トヨニシキ」よりわずかに弱い。
・ 耐冷性:「ササニシキ」「みやかおり」よりやや強く“中”である。
・ 穂発芽性:“中”
特 性 | はぎのかおり | みやかおり |
耐冷性 | 中 | やや弱 |
耐倒伏性 | やや弱 | やや弱 |
葉いもち抵抗性 | やや強 | 中 |
穂いもち抵抗性 | やや強 | やや弱 |
穂発芽性 | 中 | 中 |
4.品質・食味特性
・心白が「みやかおり」より少なく、光沢がやや優る。
・ 玄米の外観品質は「みやかおり」より良好であるが、「ササニシキ」より乳白、腹白、心白がやや多く、光沢が劣る。
・ 精米の白度は「みやかおり」と同程度かやや低い。
・ 香りの強さは「みやかおり」と同程度で、炊飯する場合の混米率は3〜5%が適当である。
5.適地等
・ 東北中南部の平坦地に適する。
6.栽培上の注意
・ 多肥栽培では香りが低下する傾向がみられるので、極端な多肥栽培は避ける。
・ 香りの低下を防止するため、機械乾燥する場合には高温による急激な乾燥を避ける。
・ 適期刈り取りに努め、品質の低下を防ぐ。
・ 白葉枯病抵抗性は“弱”なので、常発地では防除を徹底する。
<参考資料>
農林水産省農林水産技術会議事務局(平成3年6月):平成3年農林水産省育成農作物新品種(夏作物・園芸作物)。
reigai@ml.affrc.go.jp