図説:東北の稲作と冷害

品種解説:「はまゆたか」


本品種の耐冷性は「キタオウ」より強く“極強”である。名前の意味は、“寒冷地海岸地帯でいつも大豊作を期待すること”を表現する。

品種解説:「はまゆたか」

1.来歴の概要
 早生でいもち病抵抗性、耐冷性に優れた「ふ系115号」と、晩生で多収、良食味の「奥羽321号」との第一世代を母とし、早生で多収の「キタオウ」を父として、1987年に青森県農業試験場藤坂支場で交配された。1992年に「ふ系168号」の系統番号が付けられ、1995年に水稲農林335号として登録された。

2.形態的特性
・ 稈 長:「キタオウ」よりやや長い。
・ 穂 長:「キタオウ」よりやや長い。
・ 穂 数:「キタオウ」並みかやや少ない。
・ 粒 大:「キタオウ」並みで“中”であり、千粒重は「キタオウ」並みである(下図参照)。

「はまゆたか」の特徴

3.生態的特性
・ 出穂期・成熟期:「キタオウ」より1日程度遅い、早生である。
・ 収 量:「キタオウ」並みに高く、特に低温年次では「キタオウ」より優る(上図参照)。
・ 耐倒伏性:「キタオウ」並みかやや劣る。
・ 葉いもち抵抗性:“極強”
・ 穂いもち抵抗性:“極強”
・ 耐冷性:「キタオウ」より強い。
・ 穂発芽性:「キタオウ」より発芽しやすい。

特 性はまゆたかキタオウハツコガネ
耐冷性極強やや強
耐倒伏性やや強やや強やや強
葉いもち抵抗性極強
穂いもち抵抗性極強
穂発芽性やや易やや難

4.品質・食味特性
・ 玄米は光沢があり、腹白、心白の発現は少ない。
・ 品質は「キタオウ」並みの“上の下”である。
・ 食味は「キタオウ」より優り“中の上”である。

5.適地等
・ 寒冷地北部の冷涼地帯、その他寒冷地の山間地及び関東以西の山間冷涼地。

6.栽培上の注意
・ 耐倒伏性は“やや強”とあまり強くないので、品質・食味の低下を防ぐためにも多肥栽培は避け、施肥量は地帯別の施肥基準に準ずる。
・ 耐冷性は“極強”であるが、品種特性を発揮させるためにも、低温時には深水灌漑で幼穂を保護する。
・ 穂発芽性は“やや易”なので、適期刈り取りにより品質の低下を防ぐ。
・ 白葉枯病抵抗性は“弱”であるので、常発地帯での作付けは避ける。


<参考資料>
 農林水産省農林水産技術会議事務局(平成7年9月):平成7年農林水産省育成農作物新品種(夏作物・園芸作物)。

 
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