図説:東北の稲作と冷害

品種解説:「いでゆもち」


本品種の障害型耐冷性は「わせとらもち」より強く、“中”である。名前の意味は、“出湯がたくさんある高冷地で栽培されること”を表現する。

品種解説:「いでゆもち」

1.来歴の概要
 「藤もち773(オトメモチ/藤329)」を母とし、「わせとらもち」を父として、1982年に青森県農業試験場藤坂支場で交配された。1989年に「ふ系糯156号」の地方番号が付けられ、1996年に水稲農林糯341号として登録された。

2.形態的特性
・ 稈 長:「わせとらもち」よりやや短く、「アネコモチ」並みかやや長い。
・ 穂 長:「わせとらもち」よりやや長く、「アネコモチ」並みである。
・ 穂 数:「わせとらもち」並みかやや少なく、「アネコモチ」より多い、短稈、偏穂重型の糯種である。
・ 粒 大:「わせとらもち」並みであるが、粒厚が厚い。
・ 千粒重:「わせとらもち」「アネコモチ」より重い。

「いでゆもち」の特徴

3.生態的特性
・ 出穂期・成熟期:「わせとらもち」並みで、育成地では“早生”である。
・ 収 量:「わせとらもち」並みかやや優り、「アネコモチ」並みである。
・ 耐倒伏性:「わせとらもち」並みで、「アネコモチ」より弱い。
・ 葉いもち抵抗性:“やや強”
・ 穂いもち抵抗性:“中”
・ 耐冷性:「わせとらもち」より強い。
・ 穂発芽性:「わせとらもち」並みである。

特 性いでゆもちわせとらもち
耐冷性やや弱
耐倒伏性やや強やや強
葉いもち抵抗性やや強やや弱
穂いもち抵抗性
穂発芽性

4.品質・食味特性
・ 玄米の外観品質は「わせとらもち」に優るが、「アネコモチ」より劣る“上の下”である。
・ 餅の食味はこしが強く良好であり、「わせとらもち」より優る“上の下”である。

5.適地等
・ 寒冷地北部の冷涼地帯、その他寒冷地の山間地および関東以西の山間冷涼地帯に適する。

6.栽培上の注意
・ 耐倒伏性は“やや強”であるが、品質・食味の低下を防ぐためにも多肥栽培は避ける。
・ 穂発芽性が“易”であることから、適期刈り取りにより品質の低下を防ぐ。
・ いもち病圃場抵抗性は葉いもち、穂いもちともに十分でないことから、基本防除を励行する。
・ 耐冷性は“中”と十分でないので、低温時には深水灌漑を行って幼穂を保護する。
・ 白葉枯病に弱いので常発地での作付けを避ける。


<参考資料>
 農林水産省農林水産技術会議事務局(平成8年8月):平成8年農林水産省育成農作物新品種(夏作物・園芸作物)。

 
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