図説:東北の稲作と冷害

品種解説:「カグヤモチ」


本品種の耐冷性は「わせとらもち」「サカキモチ」より強い“強”である。名前の意味は、“品質が良く熟色が鮮やかであることを、かぐや姫に例えたこと”を表現する。

品種解説:「カグヤモチ」

1.来歴の概要
 糯で耐冷性の強い「中母37」を母とし、草型良、耐冷性強の「ふ系126号」を父として、1980年に青森県農業試験場藤坂支場で交配された。1987年に「ふ系糯147号」の地方番号が付けられ、1990年に水稲農林糯305号として登録された。

2.形態的特性
・ 稈 長:「わせとらもち」並みで、「サカキモチ」より短い。
・ 穂 長:「わせとらもち」より長く、「サカキモチ」より短い。
・ 穂 数:「わせとらもち」より少なく、「サカキモチ」よりやや多い。育成地では、中短稈、偏穂重型のもち種である(下図参照)。
・ 粒 大:「わせとらもち」よりやや大きいが、「サカキモチ」より小さい。
・ 千粒重:ほぼ「わせとらもち」並みである。

「カグヤモチ」の特徴

3.生態的特性
・ 出穂期:「わせとらもち」並みかやや遅い。
・ 成熟期:「わせとらもち」並みかやや早く、育成地では“中生の早”である。
・ 収量性:「わせとらもち」「サカキモチ」より多収である(上図参照)。
・ 耐倒伏性:「わせとらもち」並みで、「サカキモチ」より強い。
・ 葉いもち抵抗性:「わせとらもち」「サカキモチ」より強い。
・ 穂いもち抵抗性:「わせとらもち」「サカキモチ」より強い。
・ 耐冷性:「わせとらもち」「サカキモチ」より強い“強”である。
・ 穂発芽性:「わせとらもち」並みで、「サカキモチ」より発芽しやすい。

特 性カグヤモチわせとらもちサカキモチ
耐冷性やや弱
耐倒伏性やや強やや強
葉いもち抵抗性やや弱
穂いもち抵抗性
穂発芽性やや難

4.品質・食味特性
・ 粒張り、白度、光沢が良く、着色粒の発生が少ない。
・ 玄米の外観品質は「わせとらもち」より良く、「サカキモチ」にも優る。
・ 餅の食味は「わせとらもち」より良い。

5.適地等
・ 東北北部および東北中南部の中山間地、中部以南の山間冷涼地帯に適する。

6.栽培上の注意
・ 倒伏抵抗性は「わせとらもち」並みで、また穂発芽性も「わせとらもち」並みの易であるので基準施肥を守り、倒伏させないように注意する。
・ 登熟が早いので、遅刈りによる品質低下に注意する。


<参考資料>
 農林水産省農林水産技術会議事務局(平成2年6月):平成2年農林水産省育成農作物新品種(夏作物・園芸作物)。

 
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