図説:東北の稲作と冷害

品種解説:「キタオウ」


本品種の耐冷性は「シモキタ」より強く、「コチミノリ」より弱い“中”である。名前の意味は、“奥羽地方北部に耐冷性良食味品種として普及することを願う”を表現する。

品種解説:「キタオウ」

1.来歴の概要
 多収・良食味の「ふ系108号」を母とし、登熟良・良質の「ふ系113号」を父として、1979年に青森県農業試験場藤坂支場で交配された。1985年に「ふ系140号」の地方番号が付けられ、1990年に水稲農林304号として登録された。

2.形態的特性
・ 稈 長:「シモキタ」より短く、「コチミノリ」よりやや長い。
・ 穂 長:「シモキタ」並みで、「コチミノリ」より短い。
・ 穂 数:「シモキタ」「コチミノリ」より少ない短稈、偏穂重型のうるち種である(下図参照)。
・ 粒 大:「シモキタ」より大きい。
・ 千粒重:「シモキタ」より重い。

「キタオウ」の特徴

3.生態的特性
・ 出穂期:「シモキタ」より1〜2日早く、「コチミノリ」より2〜3日早い。
・ 成熟期:「シモキタ」より2〜3日早く、「コチミノリ」より10日程早い。育成地では“早生の早”である。
・ 収量性:低温時の登熟が「シモキタ」並みに良く、「シモキタ」より多収である(上図参照)。
・ 耐倒伏性:「シモキタ」より強く、「コチミノリ」並みである。
・ 葉いもち抵抗性:「ヨネシロ」並みの“強”である。
・ 穂いもち抵抗性:“中”
・ 耐冷性:「シモキタ」より強く、「コチミノリ」より弱い“中”である。
・ 穂発芽性:「シモキタ」より難である。

特 性キタオウシモキタコチミノリ
耐冷性やや弱
耐倒伏性やや強やや強
葉いもち抵抗性
穂いもち抵抗性
穂発芽性やや難

4.品質・食味特性
・ 粒張りが良好で、腹白、心白の発生も少ない。
・ 玄米の外観品質は「シモキタ」に優る。
・ 食味は「シモキタ」に優り、「ハマアサヒ」並みで、早生としては良食味である。

5.適地等
・ 東北北部の冷涼地帯、東北中南部以南〜中部の山間冷涼地帯に適する。

6.栽培上の注意
・ 穂数がやや確保しにくいので、健苗育成に努め、初期生育の確保に努める。
・ 品質、食味の低下を防ぐため、多肥栽培を避け、適期刈り取りに努める。
・ 障害型耐冷性は十分でないので、穂ばらみ期の低温時には深水管理で幼穂を保護する。


<参考資料>
 農林水産省農林水産技術会議事務局(平成2年6月):平成2年農林水産省育成農作物新品種(夏作物・園芸作物)。

 
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