図説:東北の稲作と冷害

品種解説:「コイヒメ」


本品種の耐冷性は「アキヒカリ」「ヨネシロ」より強い“強”である。名前の意味は、“信玄の奥方のように、米がきれいで品質、食味が良いこと”を表現する。

品種解説:「コイヒメ」

1.来歴の概要
 良食味で耐冷性の強い「コシヒカリ」と中生の多収・安定な中生品種である「レイメイ」との第一世代を母とし、中生で良質、安定多収品種の「アキヒカリ」を父として、1975年に青森県農業試験場藤坂支場で交配された。1981年に「ふ系129号」の系統名が付けられ、1989年に水稲農林279号として登録された。

2.形態的特性
・ 稈 長:「アキヒカリ」並みかやや長く、「ヨネシロ」より短い。
・ 穂 長:「アキヒカリ」並みで、「ヨネシロ」より短い。
・ 穂 数:「アキヒカリ」並みかやや多く、「ヨネシロ」よりは多い(下図参照)。偏穂重型のうるち種である。
・ 粒 大:「アキヒカリ」とほぼ同じで、「ヨネシロ」より小さい。
・ 千粒重:「アキヒカリ」「ヨネシロ」よりやや重い。

「コイヒメ」の特徴

3.生態的特性
・ 出穂期:「アキヒカリ」より2日早い。
・ 成熟期:「アキヒカリ」「ヨネシロ」並みで、育成地では“早生”である。
・ 収量性:「アキヒカリ」並みかやや優る。(上図参照)。
・ 耐倒伏性:「アキヒカリ」並みかやや弱いが、「ヨネシロ」よりは強い。
・ 葉いもち抵抗性:「アキヒカリ」より弱い。
・ 穂いもち抵抗性:「アキヒカリ」より弱く、「ムツホナミ」より強い。
・ 耐冷性:「アキヒカリ」「ヨネシロ」より強い。
・ 穂発芽性:「アキヒカリ」より発芽しやすい。

特 性コイヒメアキヒカリシモキタ
耐冷性やや弱やや弱
耐倒伏性やや強
葉いもち抵抗性やや強
穂いもち抵抗性やや強
穂発芽性やや易

4.品質・食味特性
・ 腹白、心白は極めて少ない。
・ 玄米の外観品質は「アキヒカリ」と同じで良質である。
・ 食味は「アキヒカリ」「ヨネシロ」より優れ、「ムツホナミ」より良い“上の下”である。

5.適地等
・ 東北北部の中生地帯、東北中南部〜北陸の早生地帯、関東以西の山間冷涼地帯に適する。

6.栽培上の注意
・ 平坦地での多肥栽培は倒伏しやすくなるので施肥基準を守る。
・ 障害型耐冷性は強いが、穂ばらみ期の低温時には深水管理で幼穂を保護する。
・ いもち病には強くないので基準防除を徹底する。
・ 遅刈りは品質低下を招くので適期刈り取りに努める。


<参考資料>
 農林水産省農林水産技術会議事務局(平成元年6月):平成元年農林水産省育成農作物新品種(夏作物・園芸作物)。
 
 
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