図説：東北の稲作と冷害
品種解説：「こころまち」
本品種の障害型耐冷性は「ササミノリ」より明らかに強く、“強”である。名前の意味は、“「ひとめぼれ」のイメージに重ねて、生産者・消費者両方から愛されること”を表現する。
品種解説：「こころまち」
１．来歴の概要
早生で良質、良食味の「東北131号」（後の「ハヤユタカ」）を母とし、中生で耐冷性といもち病抵抗性の優れた「中部44号」を父として、1982年に宮城県古川農業試験場で交配された。1986年に「東285」の系統名が付けられ、1993年に水稲農林321号として登録された。
２．形態的特性
・ 稈 長：「ササミノリ」よりやや短い。
・ 穂 長：「ササミノリ」よりやや長い。
・ 穂 数：「ササミノリ」よりやや少ない“偏穂数型”のうるち種である（下図参照）。
・ 粒 大：「ササミノリ」より小さい。
・ 千粒重：「ササミノリ」よりやや小さい（下図参照）。
３．生態的特性
・ 出穂期・成熟期：「ササミノリ」よりやや早く、育成地では“早生の晩”である。
・ 収量性：「ササミノリ」並みである。
・ 耐倒伏性：「ササミノリ」より明らかに強い。
・ 葉いもち抵抗性：「ササミノリ」並みである。
・ 穂いもち抵抗性：「ササミノリ」並みである。
・ 耐冷性：「ササミノリ」より明らかに強い。
・ 穂発芽性：「ササミノリ」より難である。
| 特 性 | こころまち | ササミノリ |
|---|
| 耐冷性 | 強 | やや弱 |
|---|
| 耐倒伏性 | やや強 | やや弱 |
|---|
| 葉いもち抵抗性 | 強 | 強 |
|---|
| 穂いもち抵抗性 | 強 | 強 |
|---|
| 穂発芽性 | やや難 | 中 |
|---|
４．品質・食味特性
・玄米の光沢がよく、腹白、心白は「ササミノリ」より少ない。
・ 玄米の外観品質は「ササミノリ」に優り、“上の中”である。
・ 食味は「ササミノリ」より明らかに良好で、「ササニシキ」に近い“上の下”である。
５．適地等
・ 東北中南部の山間地帯および三陸沿岸地帯に適する。
６．栽培上の注意
・ 生育量が「ササミノリ」より小さいので健苗育成に留意し、初期生育の確保に努める。
・ 白葉枯病抵抗性が“弱”なので、常発地では防除に留意する。
＜参考資料＞
農林水産省農林水産技術会議事務局（平成５年７月）：平成５年農林水産省育成農作物新品種（夏作物・園芸作物）。
reigai@ml.affrc.go.jp
