図説:東北の稲作と冷害
品種解説:「蔵の華」
本品種の障害型耐冷性は「美山錦」より強く“強”である。名前の意味は、“酒蔵の中で酒香を漂わせ人を酔わせる華となるお米”を表現する。
品種解説:「蔵の華」
1.来歴の概要
酒造好適米「山田錦」を母とし、中生の耐病、良質系統「東北140号」を父として、1987年に宮城県古川農業試験場で交配された。1993年に「東北154号」の系統名が付けられ、1997年に水稲農林351号として登録された。
2.形態的特性
・ 稈 長:「美山錦」より15cm程度短く、「ササニシキ」よりやや短い。
・ 穂 長:「美山錦」より明らかに短く、「ササニシキ」と同程度である。
・ 穂 数:「美山錦」より50〜70%多く、「ササニシキ」よりやや多い(下図参照)。
・ 粒 大:「美山錦」よりやや大きい。
・ 千粒重:「美山錦」よりやや大きい。
3.生態的特性
・ 出穂期:「美山錦」よりやや遅く、「ササニシキ」よりやや早い。
・ 成熟期:「美山錦」よりやや遅く、「ササニシキ」よりやや早く、育成地では“中生の晩”である。
・ 収量性:「美山錦」「ササニシキ」より明らかに優る。(上図参照)。
・ 耐倒伏性:「美山錦」「ササニシキ」より強い。
・ 葉いもち抵抗性:“中”
・ 穂いもち抵抗性:“強”
・ 耐冷性:「美山錦」より強い。
・ 穂発芽性:「美山錦」並みである。
特 性 | 蔵の華 | 美山錦 |
耐冷性 | 強 | やや強 |
耐倒伏性 | 中 | 弱 |
葉いもち抵抗性 | 中 | 中 |
穂いもち抵抗性 | 強 | 中 |
穂発芽性 | 難 | 難 |
4.品質・食味特性
・ 玄米の外観品質は腹白、乳白が少なく、心白の発現も少ない。
・ アミロース含量は「美山錦」「ササニシキ」よりやや高めである。
・ タンパク質含量は「美山錦」「ササニシキ」より低い。
・ 白米の吸水は「美山錦」より速く、吸水量は「美山錦」より多く、「山田錦」並みである。
・ 製成酒はアミノ酸度が低く、グルコース含有量が大きく、ピルビン酸含有量が低い。
・ 官能評価は「美山錦」と遜色なく、「蔵の華」は酒造好適米としての適性を備える。
5.適地等
・ 東北中南部平坦地帯および丘陵地帯の一部に適する。
6.栽培上の注意
・ 追肥時期は幼穂形成期を基準とし、減数分裂期以降の追肥は玄米のタンパク質含有率を高めるので行わない。
・ 大粒であるので、高品質米の確保のため玄米は2mm目で調製する。
・ 葉いもち抵抗性が“中”であるので、適期防除に努める。
<参考資料>
農林水産省農林水産技術会議事務局(平成9年8月):平成9年農林水産省育成農作物新品種(夏作物・園芸作物)。
reigai@ml.affrc.go.jp