図説:東北の稲作と冷害
品種解説:「おきにいり」
本品種の耐冷性は「トドロキワセ」には及ばないが、「コガネヒカリ」「あきたこまち」よりやや強い。名前の意味は、“美味しくて定番として食べ続けたいお米であること”を表現する。
品種解説:「おきにいり」
1.来歴の概要
いもち病抵抗性、耐冷性が強く、比較的良食味の「中部47号」を母とし、穂いもち抵抗性が比較的強く、良食味で多収の「奥羽313号」を父として、1984年に東北農業試験場で交配された。1992年に「奥羽346号」の地方番号が付けられ、1996年に水稲農林342号として登録された。
2.形態的特性
・ 草 丈:「キヨニシキ」「ササニシキ」に比べるとやや長く、分げつは少ない。
・ 稈 長:「トヨニシキ」「ササニシキ」並みにやや長稈である。
・ 穂 長:「トヨニシキ」「ササニシキ」並みである。
・ 穂 数:「ササニシキ」より少なく、「トヨニシキ」並みかやや少ない中間型である(下図参照)。
・ 粒 大:「トヨニシキ」「ササニシキ」よりやや大きく、粒厚が厚く、千粒重もこれらの品種よりやや大きい(下図参照)。
3.生態的特性
・ 出穂期・成熟期:「トヨニシキ」「ササニシキ」とほぼ等しく、中生の晩である。
・ 収 量:「トヨニシキ」より高く、特に多肥条件では「キヨニシキ」「ササニシキ」に比べても多収である。
・ 耐倒伏性:「トヨニシキ」並みかやや強い。
・ 葉いもち抵抗性:「トヨニシキ」「トドロキワセ」と同程度かやや劣る。
・ 穂いもち抵抗性:「トヨニシキ」「トドロキワセ」並みである。
・ 耐冷性:「トドロキワセ」には及ばないが、「コガネヒカリ」「あきたこまち」よりやや強い。
・ 穂発芽性:「あきたこまち」並みである。
特 性 | おきにいり | ササニシキ |
耐冷性 | 強 | やや弱 |
耐倒伏性 | 強 | 弱 |
葉いもち抵抗性 | やや強 | やや弱 |
穂いもち抵抗性 | 強 | 弱 |
穂発芽性 | やや難 | やや易 |
4.品質・食味特性
・ 粒揃いはよく、腹白の発生も少ないが、高温登熟など条件によっては心白や背白が発生することもある。
・ 玄米の外観品質は「トヨニシキ」より劣り、「ササニシキ」並みの“上の下”である。
・ 食味は「キヨニシキ」「トヨニシキ」「サトホナミ」よりは明らかに優り、「あきたこまち」「ササニシキ」と同等の良食味で、「ひとめぼれ」「コシヒカリ」に近い。
5.適地等
・ 東北地方中南部に適する。
6.栽培上の注意
・ 耐倒伏性、いもち病抵抗性、白葉枯病抵抗性が強く、茎葉や穂が登熟後期まで鮮麗であるので、刈り取り適期を逸しないようにする。
・ 耐倒伏性は強であるが、稈長が長いので極端な多肥栽培は避ける。
・ 高温登熟では品質がやや劣るので、適地の南部平坦地では早植えしない。
<参考資料>
農林水産省農林水産技術会議事務局(平成8年8月):平成8年農林水産省育成農作物新品種(夏作物・園芸作物)。
reigai@ml.affrc.go.jp