図説:東北の稲作と冷害

品種解説:「サオトメ」


本品種の障害型耐冷性は「ホウネンワセ」並みの“中”である。名前の意味は、“田植え後のみずみずしさ”を表現する。

品種解説:「サオトメ」

1.来歴の概要
 多収で良質の「レイホウ」と早生・穂重型で良食味であるがいもち病に弱い「北陸84号」との第一世代を母とし、早生でいもち病抵抗性強の「トドロキワセ」を父として、1970年に北陸農業試験場で交配された。1979年に「北陸113号」の系統名が付けられ、1986年に水稲農林278号として登録された。

2.形態的特性
・ 稈 長:「ホウネンワセ」より短く、「レイメイ」「アキヒカリ」より長い。
・ 穂 長:「レイメイ」より短く、「ホウネンワセ」よりやや長く、「アキヒカリ」並みである。
・ 穂 数:「レイメイ」「アキヒカリ」よりかなり多く、「ホウネンワセ」よりやや少ない(下図参照)。偏穂数型のうるち種である。
・ 粒 大:「レイメイ」「アキヒカリ」より小さく、「ホウネンワセ」と同程度かわずかに小さい。
・ 千粒重:「レイメイ」「アキヒカリ」より軽い。

「サオトメ」の特徴

3.生態的特性
・ 出穂期:「レイメイ」より1日遅く、「ホウネンワセ」とほぼ同じ。
・ 成熟期:「レイメイ」より1日早く、「ホウネンワセ」より一日遅い。育成地では“早生の早”である。
・ 収量性:「レイメイ」より高く、早生としては多収である(上図参照)。
・ 耐倒伏性:「レイメイ」よりやや弱い。
・ 葉いもち抵抗性:「ホウネンワセ」と同程度。
・ 穂いもち抵抗性:「ホウネンワセ」よりやや強い。
・ 耐冷性:「ホウネンワセ」並みの“中”である。
・ 穂発芽性:「レイメイ」並みである。

特 性サオトメホウネンワセレイメイ
耐冷性やや強
耐倒伏性やや強
葉いもち抵抗性やや強やや強
穂いもち抵抗性やや強やや強
穂発芽性やや難

4.品質・食味特性
・腹白、心白、乳白は極めて少ない。
・ 玄米の外観品質は「レイメイ」より良く、「ホウネンワセ」とほぼ同等。
・ 食味は「ホウネンワセ」並みかやや良く“上の下”である。

5.適地等
・ 東北南部以南の高冷地帯を含む早生品種地帯に適する。

6.栽培上の注意
・ いもち病抵抗性はあるが、激発地帯では適期防除に努める。
・ 耐冷性は中程度であるので、特に標高の高い地帯や冷害地帯は避ける。
・ 白葉枯病および縞葉枯病には弱いので、これらの病害の発生地帯は避ける。


<参考資料>
 農林水産省農林水産技術会議事務局(昭和61年6月):昭和61年農林水産省育成農作物新品種(夏作物・園芸作物)。
 
 
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