図説:東北の稲作と冷害
品種解説:「スノーパール」
本品種の障害型耐冷性は「トヨニシキ」並みの“やや弱”である。名前の意味は、“雪(スノー)のように白い玄米、真珠(パール)のように輝く飯米であること”を表現する。
品種解説:「スノーパール」
1.来歴の概要
「農林8号」由来の低アミロース系統「74wx2N-1」(農業生物資源研究所放射線育種場育成)を母とし、「レイメイ」を父として、1984年に東北農業試験場で交配された。1992年に「奥羽344号」の系統名が付けられ、1998年に水稲農林356号として登録された。
2.形態的特性
・ 稈 長:「トヨニシキ」よりやや長い。
・ 穂 長:「トヨニシキ」と同程度である。
・ 穂 数:「トヨニシキ」よりやや少ない(下図参照)。
・ 千粒重:「トヨニシキ」より大きく“やや大”である(下図参照)。
3.生態的特性
・ 出穂期:「トヨニシキ」よりやや早い。
・ 成熟期:「トヨニシキ」よりやや早く、育成地では“中生種”である。
・ 収量性:「トヨニシキ」と同程度に高い。
・ 耐倒伏性:“やや弱”
・ 葉いもち抵抗性:「ササニシキ」より強く、“中”である。
・ 穂いもち抵抗性:「ササニシキ」より強く、“やや弱”である。
・ 障害型耐冷性:「トヨニシキ」並みの“やや弱”である。
・ 穂発芽性:「トヨニシキ」並みの“やや易”である。
特 性 | スノーパール | トヨニシキ |
耐冷性 | やや弱 | やや強 |
耐倒伏性 | やや弱 | やや強 |
葉いもち抵抗性 | 中 | 強 |
穂いもち抵抗性 | やや弱 | 強 |
穂発芽性 | やや易 | やや易 |
4.品質・食味特性
・ 玄米の外観品質は粒揃いが良い。
・ 低アミロース米で、一般のうるち品種よりアミロース含量率が極めて低く、玄米は白濁し、玄米の白度は高い。
・ 低アミロースのため通常の水量で炊飯すると、軟らかくなりすぎる問題や餅臭のある場合もあるが、炊飯時に水の量を10%程度少なくすると、飯米が適度に固くなり、通常の食用米と同程度の食感が得られる。
・ 特に、冷えた状態での食味は「ひとめぼれ」よりも良い。
・ 加工用としてチルド米飯や冷凍米飯に適する。
・ 粘りの弱い品種と混米すると、粘りを適度に調整し、「ひとめぼれ」並みにすることも可能である。
5.適地等
・ 熟期が中生であるので、東北中南部平坦地に適する。
・ 障害型冷害に弱い特性から、秋田県以南で日本海側地域が適地とみられる。
6.栽培上の注意
・ いもち病抵抗性、障害型耐冷性とも不十分なので常発地での栽培は避けるほか、防除や低温時の水管理に留意する。
・ 稈長が長く耐倒伏性がやや弱いので、多肥栽培は避け、追肥時期にも注意する。
・ 登熟温度が高温の時はアミロース含量が低くなり、低温のときは高くなることに留意し、栽培適地を判定する。
<参考資料>
東他(1999年):低アミロース米良食味品種「スノーパール」の育成。東北農業試験場研究報告 第95号。
reigai@ml.affrc.go.jp