図説:東北の稲作と冷害
品種解説:「ソフト158」
本品種の障害型耐冷性は「日本晴」並みかやや弱く、“弱”である。名前の意味は、“ソフトタイプ米菓子加工に適し、炊飯米もふっくらした品種であること”を表現する。
品種解説:「ソフト158」
1.来歴の概要
草姿がよく、短強稈で、多収の「北陸127号」を母とし、農業環境技術研究所で突然変異の化学的変異原であるメチルメタンサルフォネート処理により得られた低アミロース系統「研系2078」を父として、1986年に北陸農業試験場で交配された。1992年に「北陸158号」の系統名が付けられ、1995年に水稲農林367号として登録された。
2.形態的特性
・ 稈 長:「アキニシキ」より10cm程度短い。
・ 穂 長:「アキニシキ」よりやや長い。
・ 穂 数:「アキニシキ」より少ない。
・ 粒 大:「アキニシキ」よりやや大きく、千粒重は「アキニシキ」より重い(下図参照)。
3.生態的特性
・ 出穂期・成熟期:「アキニシキ」並みかやや遅く、晩生の早である。
・ 収 量:標準栽培では「アキニシキ」より劣るが、穂肥を多めに施用した多肥栽培で籾数が確保された場合には増収する。(上図参照)。
・ 耐倒伏性:「アキニシキ」並みかやや強い。
・ 葉いもち抵抗性:「アキニシキ」「日本晴」並みである。
・ 穂いもち抵抗性:「日本晴」よりやや強い。
・ 耐冷性:「日本晴」並みかやや弱い。
・ 穂発芽性:「アキニシキ」より発芽し難く、「日本晴」並みである。
特 性 | ソフト158 | アキニシキ | 日本晴 |
耐冷性 | 弱 | 強 | 弱 |
耐倒伏性 | やや強 | やや強 | やや強 |
葉いもち抵抗性 | 中 | 中 | 中 |
穂いもち抵抗性 | やや強 | 中 | 中 |
穂発芽性 | 中 | やや易 | 中 |
4.品質・食味特性
・ 玄米は光沢がやや劣るが、低アミロースにもかかわらず特有の玄米の濁りはなく、腹白、心白はほとんど認められない。
・ 外観品質は“中の上”である。
・ アミロース含量は「アキニシキ」「日本晴」より明らかに低い。
・ タンパク質含量は「アキニシキ」「日本晴」並みである。
・ 米菓に加工した場合には、浮かせタイプでは外観、食感、風味とも良好であり、堅焼タイプでも対照と同等の製品を製造できる。おにぎりに加工した場合に、外観、味、粘りが良好で「コシヒカリ」に優る。
・ 食味は粘りが強く、柔らかで、味及び外観も良好で、「日本晴」より明らかに優り、「アキニシキ」並みである。またブレンドした場合に食味の劣る品種の食味を向上させる働きが強い。
5.適地等
・ 北陸、東北南部、関東以西の広い地域に適する。ただし、耐冷性が弱いため山間の冷害常襲地帯は除く。
6.栽培上の注意
・ 障害型耐冷性が弱いので、山間の冷害常襲地帯での作付けは避ける。
・ 穂肥による増収が見込まれるので、適量の穂肥を施用する。
・ 刈り遅れに注意する。
・ 白葉枯病に弱いので、常発地帯での作付けは避ける。
<参考資料>
農林水産省農林水産技術会議事務局(平成7年9月):平成7年農林水産省育成農作物新品種(夏作物・園芸作物)。
reigai@ml.affrc.go.jp