図説:東北の稲作と冷害
品種解説:「ヤマウタ」
本品種の障害型耐冷性は「アキヒカリ」より明らかに強く、「ムツニシキ」に近い“やや強”である。名前の意味は、“山間高冷地帯で豊作を祝う唄が歌われることを期待”を表現する。
品種解説:「ヤマウタ」
1.来歴の概要
「び系108号」を母とし、「アキヒカリ」を父として、1979年に青森県農業試験場藤坂支場で交配され、1980年同組み合わせの第一世代を母とし、「ふ系127号」を父として三系交配された。1986年に「ふ系143号」の系統名が付けられ、1991年に水稲農林310号として登録された。
2.形態的特性
・ 草 丈:「アキヒカリ」よりやや長い。
・ 穂 数:「アキヒカリ」並みで、“短稈偏穂重型”のうるち種である。
・ 粒 大:「アキヒカリ」並みである。
・ 千粒重:「アキヒカリ」より重い(下図参照)。
3.生態的特性
・ 出穂期・成熟期:「アキヒカリ」並みで、育成地では“早生の早”である。
・ 収量性:「アキヒカリ」より高い(上図参照)。
・ 耐倒伏性:「アキヒカリ」並みである。
・ 葉いもち抵抗性:「アキヒカリ」よりやや強い。
・ 穂いもち抵抗性:「アキヒカリ」並みである。
・ 耐冷性:「アキヒカリ」より明らかに強く、「ムツニシキ」に近い。
・ 穂発芽性:「アキヒカリ」より発芽しやすい。
特 性 | ヤマウタ | アキヒカリ |
耐冷性 | やや強 | やや弱 |
耐倒伏性 | 強 | 強 |
葉いもち抵抗性 | やや強 | やや強 |
穂いもち抵抗性 | やや強 | やや強 |
穂発芽性 | 中 | やや難 |
4.品質・食味特性
・腹白、心白の発現は少ない。
・ 玄米の外観品質は「アキヒカリ」並みである。
・ 食味は「アキヒカリ」より優り、早生としては良食味で“中の上”である。
・ タンパク質含量は「アキヒカリ」よりやや低いが、アミロース含量は「アキヒカリ」よりやや高い。
5.適地等
・ 寒冷地北部平坦地、その他寒冷地の平坦地から山間地、および関東以西の山間冷涼地帯に適する。
6.栽培上の注意
・ 初期生育が緩慢なので、健苗育成に心がけ、初期生育の促進を図る。
・ 強稈であるが、品質、食味の低下をさせないため、多肥栽培は避ける。
・ 登熟が良いので、遅刈りによる品質低下に注意する。
<参考資料>
農林水産省農林水産技術会議事務局(平成3年6月):平成3年農林水産省育成農作物新品種(夏作物・園芸作物)。
reigai@ml.affrc.go.jp