図説:東北の稲作と冷害

品種解説:「ユメコガネ」


本品種の耐冷性は「ハツコガネ」「ハマアサヒ」より明らかに強く“極強”である。名前の意味は、“夢にまで見た黄金色した耐冷性の米。また夢を乗せた期待の米”を表現する。

品種解説:「ユメコガネ」

1.来歴の概要
 多収かつ良質、良食味で耐冷性に優れた北海道の中生品種である「ゆきひかり」を母とし、極早生で多収の「ハツコガネ」を父として、1986年に青森県農業試験場藤坂支場で交配された。1992年に「ふ系167号」の系統名が付けられ、1995年に水稲農林334号として登録された。

2.形態的特性
・ 稈 長:「ハツコガネ」並みで短稈である。
・ 穂 長:「ハツコガネ」並みかやや長い。
・ 穂 数:「ハツコガネ」よりやや多い。
・ 粒 大:「ハツコガネ」並みで“中”であり、千粒重は「ハツコガネ」並みかやや軽い(下図参照)。
「ユメコガネ」の特徴

3.生態的特性
・ 出穂期・成熟期:「ハツコガネ」より1日程度遅い、極早生である。
・ 収 量:「ハツコガネ」よりやや劣るが、低温年次では「ハツコガネ」より障害不稔が少なく、気象変動に対して安定性が高い(上図参照)。
・ 耐倒伏性:「ハツコガネ」並みに強い。
・ 葉いもち抵抗性:「ハツコガネ」並みである。
・ 穂いもち抵抗性:「ハツコガネ」並みである。
・ 耐冷性:「ハツコガネ」「ハマアサヒ」より明らかに強く“極強”である。
・ 穂発芽性:「ハツコガネ」「ハマアサヒ」より発芽しにくい。

特 性ユメコガネハツコガネハマアサヒ
耐冷性極強やや強やや強
耐倒伏性やや強やや強やや強
葉いもち抵抗性
穂いもち抵抗性
穂発芽性やや難

4.品質・食味特性
・ 玄米は色沢が淡く、腹白の発現は少ない。
・ 品質は「ハツコガネ」より良く“上の下”である。
・ 食味は「ハツコガネ」「ハマアサヒ」より優り“中の上”である。

5.適地等
・ 寒冷地北部の冷涼地帯、その他寒冷地の山間地及び関東以西の山間冷涼地。

6.栽培上の注意
・ 初期の生育量がやや不足気味なので、健苗育成や本田の水管理に努め、初期成育の確保を図ること。
・ いもち病圃場抵抗性は強くないので、基本防除を励行すること。
・ 耐冷性は“極強”であるが、低温時には深水灌漑を行うこと。
・ 白葉枯病抵抗性は“弱”なので、蒸発地帯での作付けは避けること。


<参考資料>
 農林水産省農林水産技術会議事務局(平成7年9月):平成7年農林水産省育成農作物新品種(夏作物・園芸作物)。

 
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