図説:東北の稲作と冷害
品種解説:「ゆめむすび」
本品種の障害型耐冷性は「農林21号」並みの弱である。名前の意味は、“育成者や生産者の夢が結実した素晴らしい品種が消費者としっかり結ばれること”を表現する。
品種解説:「ゆめむすび」
1.来歴の概要
中生で良質の「東北137号」を母とし、極晩生で食味に優れた「北陸122号」(後の「キヌヒカリ」)を父として、1985年に宮城県古川農業試験場で人工交配された。1991年に「東北150号」の地方番号が付けられ、1996年に水稲農林344号として登録された。
2.形態的特性
・ 稈 長:「農林21号」「ササニシキ」より短い。
・ 穂 長:「農林21号」よりやや長く、「ひとめぼれ」「ササニシキ」より短い。
・ 穂 数:「ササニシキ」「農林21号」より少ない。
・ 粒 大:「農林21号」「ササニシキ」よりやや大きく、千粒重もこれらの品種よりやや大きい。
3.生態的特性
・ 出穂期:「ササニシキ」より7日程度遅く、「農林21号」よりやや早い。
・ 成熟期:「農林21号」よりやや早く、晩生の晩である。
・ 収 量:「農林21号」「ササニシキ」に優る。
・ 耐倒伏性:「農林21号」「ササニシキ」より明らかに強い。
・ 葉いもち抵抗性:“中”
・ 穂いもち抵抗性:“やや強”
・ 障害型耐冷性:「農林21号」並みの“弱”である。
・ 穂発芽性:「ササニシキ」「農林21号」並みである。
特 性 | ゆめむすび | ササニシキ |
耐冷性 | 弱 | やや弱 |
耐倒伏性 | やや強 | 弱 |
葉いもち抵抗性 | 中 | やや弱 |
穂いもち抵抗性 | やや強 | 弱 |
穂発芽性 | やや易 | やや易 |
4.品質・食味特性
・ 玄米の外観品質は腹白、乳白が少なく、「農林21号」「ササニシキ」より良好で「コシヒカリ」並みの“上の中”である。
・ アミロース含量、タンパク質含量は「ササニシキ」と同程度である。
・ 食味は「ササニシキ」より優り、「ひとめぼれ」並みの“上の中”である。
5.適地等
・ 寒冷地中南部の平坦地帯に適する。
6.栽培上の注意
・ 晩生のため穂ばらみ期に低温に遭遇する確率は低くなるが、耐冷性は弱いので、危険期に低温が予想される場合は深水管理により幼穂の保温に努める。
・ いもち病圃場抵抗性は葉いもちには中程度であり、適期防除に努める。
<参考資料>
農林水産省農林水産技術会議事務局(平成8年8月):平成8年農林水産省育成農作物新品種(夏作物・園芸作物)。
reigai@ml.affrc.go.jp