確率予報の利用法

はじめに


    紹介にあたり
  1. はじめに・<PDF版>
  2. 水稲と気象<PDF版>
  3. 冷害危険度を考慮した1か月予報の利用法<PDF版>
  4. 3か月平均気温の確率予報を用いた作付品種の栽培管理への利用法<PDF版>
  5. まとめと課題<PDF版>
1 はじめに
 東北地方における農業は、豊かな土地資源と農業労働力に支えられ、稲作を中心とした多様な複合農業が展開されている。平成11年12月16日に公表された農林水産省統計情報部の「平成11年産水陸稲の収穫量」によると、東北地方は、作付面積45万7千ヘクタール、収穫量約258万トンで全国の生産量の約28%を占め、米の一大生産拠点となっている。
 一方、農業は自然条件に左右されやすいため、農家にとっては自然災害がもたらす被害をいかに軽減するかが大きな課題である。冷害、風水害、干ばつによって収穫量が大きく減収してしまうことはよく知られている。また、病害虫も収穫量を大きく変動させる原因である。ただ、水稲における自然災害被害率の長期傾向は、戦後しばらく影響が大きかった風水害や病害虫の被害率は減少し、1970年代以降冷害の被害率が大きくなっている(長谷部,1999)。
 東北地方では、明治以来5年に一度程度の割合でやませによる冷害が発生しており、1980、88、93年は大冷害となった。特に、1993年の大冷害は東北地方の稲作に壊滅的な打撃を与え、コメの緊急輸入等日本の社会構造にまで大きな影響を及ぼした。日本の長期予報の研究は東北地方における冷害をなんとかして防ごうとする農民に対する愛情から出発している(朝倉,1980)。また、稲作の生産安定化を冷害対策の観点から見ると、技術的には耐冷品種の開発、保温折衷苗代等の栽培技術、間断灌漑や深水灌漑等の水管理が重要となる。
 このように、東北地方では農業、特に稲作に関連して暖候期の天候予報、なかでも夏期における低温の有無の予測に高い関心がある。確率予報の利用法を検討するに当たり、東北農業試験場が中心となって進めている「水稲冷害早期警戒システムプロジェクト」での確率予報の利用について主に検討した。次節(2節)では水稲栽培と気象の影響について概説し、3節では1か月予報の気温確率を用いて冷害危険度を考慮した深水等水管理のコスト/ロスモデルの利用について述べる。4節では、暖候期予報や3か月予報の気温確率を用いた作付品種別による栽培管理への利用法について検討し、5節で今後の課題についてまとめた。
 なお、「水稲冷害早期警戒システムプロジェクト」は、東北農政局・東北農業試験場が中心となって平成6年から仙台管区気象台と東北管内6県の協力を得て進めている「東北地域水稲安定生産推進連絡協議会」の水稲冷害早期警戒システムワーキンググループのプロジェクトである。

 
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