確率予報の利用法

3か月平均気温の確率予報を用いた作付品種の栽培管理への利用法


    紹介にあたり
  1. はじめに<PDF版>
  2. 水稲と気象<PDF版>
  3. 冷害危険度を考慮した1か月予報の利用法<PDF版>
  4. 3か月平均気温の確率予報を用いた作付品種の栽培管理への利用法・<PDF版>
  5. まとめと課題<PDF版>
4 3か月平均気温の確率予報を用いた作付品種の栽培管理への利用法
1) 設定条件
 暖候期予報や3か月予報の3か月平均気温の確率予報を利用する場合を考える。
 暖候期予報は3月10日頃に発表される。この時点において、生産者は作付品種の構成を既に決定しているため、この利用法を用いて作付品種を選択するということは出来ないが、耐冷性の異なる品種の作付圃場を決定するための最終判断材料として利用できる。耐冷性の弱い品種については、深水管理などの対策が可能な圃場に配置することが望まれる。また、その後に発表される3か月予報を用いて、適切な栽培管理の意思決定に使用する。
 次の2品種の収量(kg/10a)と夏の気温には表3-4のような関係があると仮定する。これは冷害危険度地帯7、宮城県北部を対象とし、低温時には耐冷性の強い「ひとめぼれ」の被害軽減効果が相対的に高く、高温時には「ササニシキ」の多収性が発揮されるように設定している。なお、気温が低い場合の収量は1993年冷夏の被害状況を参考にしており、高温時の品質低下などは考慮しないことにする。

表3-4 品種別気温階級別収量(kg/10a)
気温低い平年並高い
品種:ひとめぼれ300500510
品種:ササニシキ200530570

2) 確率予報に基づく試算
 夏の平均気温の確率が「低い:50%、平年並:30%、高い:20%」と予報された場合について平均的な収量は次のように計算される。
「ひとめぼれ」の場合
  300 × 0.5 + 500 × 0.3 + 510 × 0.2 = 402(kg/10a)
「ササニシキ」の場合
  200 × 0.5 + 530 × 0.3 + 570 × 0.2 = 373(kg/10a)

 この比較から、「ササニシキ」については「ひとめぼれ」より減収幅が大きいと見込まれるので、深水管理などの対策が可能な圃場に配置する。また、収量予測からも農家は今後の天候に十分注意し、適切な栽培管理をする必要がある。
 両品種の期待収量をいくつかの確率予報について求めたものが表3-5となる。

表3-5 与えられた確率予報に対する両品種の収量の期待値(kg/10a)
気温予報(%)収量の期待値
低い平年並高いひとめぼれササニシキ
602020382340
504010401369
503020402373
405010421402
404020422406
403030423410
306010441435
305020442439
304030443443
303040444447
205030463476
204040464480
203050465484
202060466488

 これによると、気温の「低い」確率が20%以下であれば「ササニシキ」の収量が上回り、30%ではほぼ同じ収量で、40%以上になると「ひとめぼれ」の収量が上回る。ただし、これはあくまでも暖候期予報なので、その後発表される3か月予報の内容に基づいて栽培管理の意思決定がなされなければならない。
 一方、この種の情報は本来品種選択に活用されるべきものであるが、その年の作付けに関しては適用できないので、次の年以降の作付けに参考すべきものと考える。
 また、その後に発表される3か月予報においても、平均気温の確率予報の内容を上の表に照らして栽培管理の意思決定に使用する。

 
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